戦後60年企画
斎藤一郎著作集  新編集の著作集 全十五巻・別巻一
責任編集 増山太助 村上寛治

 戦後日本労働運動の栄光と挫折を、そ してその驚くべき変質を、この運動のただなかで 指導し左翼的に批判しつづけてきた斎藤一郎──彼の革命的パトスと 批判的精神にみなぎった労作の初めての集大成!
 今日の日本労働運動の変質に憤怒を抱き、この危機を突破しようと日夜奮闘しつづけている闘う労働者たちに、この新編著作集を贈る!

 
 
著者略歴
1911年 北海道長万部に生まれる。
1931年 秋田で農民運動に参加。
1932年 全農全国会議秋田地方委員会を組織 し共産党に入党。11月,治安維持法違反で検挙されて懲役5年の判決を受ける。
1939年 非転向で出獄。
1945年 共産党に再入党、党本部から派遣されて秋田県党の再建に協力する。
1946年 産別会議事務局に入り、党フラクションの責任者として労働運動に献身。
1949年 労働組合政策をめぐって党中央と決定的に対立、産別会議を離れる。以後、活動家グループの指導と執筆活動に専念する。
1968年 8月30日逝去。享年57歳。
刊行にあたって
増山 太助  元読売新聞従組書記長
 戦後の最初期の、労働組合活動の分野において、また労働運動評論家として健筆をふるった斎藤一郎君は、戦時中から治安維持法の下で苦闘した経験の持ち主であった。
 いうまでもなく、日本は敗戦によってアメリカをはじめとする連合諸国の支配下におかれ、労働運動も曲折をくりかえしながら産別会議を中心に再編されていった。斎藤君の言説はその記録であるといっていいであろう。
 今回の『斎藤一郎著作集』の刊行は、20世紀の労働運動を振り返り、21世紀の再編を待望してのことである。
 広く皆さんのご支持を得たいものと念じている。 

村上 寛治 元朝日新聞労働記者 
 斎藤一郎君は、産別会議結成のときから書記として、また共産党員として運動に参加していた。だから産別会議を主体とする左翼労働運動が1947年の「 二・一スト 」で挫折したのを転機にして台頭してきた組合民主化≠ノよって崩壊する過程を、もっとも熟知している一人である。もちろん、産別の「右」と総同盟の「左」、細谷松太と高野実の合作といわれる「総評」結成の背景についてもである。合作を戦前派による右と左からなる「安定理論」だと評したのも、斎藤君だった。
 総評の指導が、高野らの戦前派から太田と岩井らの戦後派に移った1955年、日本の労働運動は、五五年体制の一角を担う体制内の運動と化していった。この闘わざる、大組織=\―斎藤君の非難は、この点にむけられた。
 やがて総評は、「労使対等」のバランスが崩れ去る中に解体して行くことになる。こうした歴史を振り返ってほしい。




推 薦
いいだ もも   作家
斎藤一郎、細谷松太両氏は戦後すぐの日本共産党指導部の〈解放軍〉規定と〈赤色労働組合主義〉路線に反対し、労働運動の大衆的・自主的発展に努めておられた。私は彼らに訓導を受け、終生消えることのない影響を受けた。今読み直してみて感慨深いものがある。

鎌田 慧    ルポライター
日本の労働運動は、解体の危機に瀕している。反撃の端緒をどこでつかむか。斎藤一郎の先見的にして膨大な批判の中に、いくつかの鍵が隠されている。

熊沢 誠    甲南大学名誉教授・研究会「職場の人権」代表

小宮山量平  編集者・作家
日本資本主義の歴史で、今ほど労働が貶められている時代はない。老馬も千里の夢──今こそ自立的精神をもった労働運動の再生を! 斎藤一郎著作集にはそのための豊かな種子がある。

白石徳夫    元新産別中央執行委員
著者斎藤一郎。剛毅の人であった。すべてが混沌としていた時代に、ひとり昂然と労働評論のパイオニアの道を切り開いていった。

仁田道夫    東京大学社会科学研究所教授
斎藤一郎氏の『戦後日本労働運動史』は、私が学生時代に労働問題に関心を持ち始めたときに手にした最初の労働運動史に関する教科書であった。斎藤運動史の意義は現在も失われていない。氏の著作集の刊行を、研究者として歓迎したい。

板東 慧    (社)国際経済労働研究所会長
『二・一スト前後』が世に出た時、その臨場感あふれる物語に深く感銘し、一気に読み終えたことを覚えている。いま、占領下の新事実が発掘され、戦後が問い直されようとしているとき、この復刊は意義深い。特に、その時代を知らぬ世代に一読をすすめたい。

水野 秋    元『新労働通信』代表
敗戦の年の年末に三十万人台という戦前のピーク時の組織人員を越え、雨後の筍の如く発展した戦後労働運動の渦中に投じ、疾風の如く走り抜けた後、振りかえって検証した男がいた。それがどれほど異常な時代だったか知っておくことは必要だし大切なことだ。

三戸信人    元新産別政治部長
斎藤一郎は俗に言う一匹狼、誰も近よらない。それでも斎藤一郎を評価するものが一人おれば、必ずつづくものが十人できる。「鶴九皐に鳴き 声天に聞こゆ」ということだ。

山本 潔     東京大学名誉教授
斎藤一郎氏の著作は、戦後日本における労働運動主体の内実と、占領軍・政府・財界の対応を、白日の下に晒すものであった。吹雪の中に道を求める”北海道人”の独立独歩の精神の所産ともいえようか。



全十五巻・別巻一 [完結] 
全巻の構成
第一巻 戦後日本労働運動の発火点
      ─二・一スト前後
第 二 巻 労働戦線の統一
第 三 巻 戦後日本労働運動史 [上]
第 四 巻 戦後日本労働運動史 [中]
第 五 巻 戦後日本労働運動史 [下]
第 六 巻 戦後労働運動の焦点
第 七 巻 官憲の暴行  
第 八 巻 日本の労働貴族
第 九 巻  労働運動批判─ 長期低姿勢下の総評 [上]
第 十 巻  労働運動批判─ 長期低姿勢下の総評 [下]
第十一巻 安保闘争史 [上]
第十二巻 安保闘争史 [下]
第十三巻 戦後賃金闘争史 [上]
第十四巻 戦後賃金闘争史 [下]
第十五巻 総評 この闘わざる大組織
別   巻 追悼 斎藤一郎